明治四十年法律第四十五号より第三十三章
永井和京都大学教授の「日本軍の慰安所政策について」を読んでいたら、次の部分が目に留まった。
このような条件でなされる娼妓稼業契約は「身売り」とよばれ、これが人身売買として認定されておれば、大内の行為は「帝国外ニ移送スル目的ヲ以テ人ヲ売買」するものにほかならず、刑法第226条の人身売買罪に該当する。しかし、当時の法解釈では、このような条件での娼妓契約は「公序良俗」に違反する民法上無効な契約とはされても、少なくとも日本帝国内にとどまるかぎりは、刑法上の犯罪を構成する「人身売買」とはみなされなかった。
「日本帝国内にとどまるかぎりは、刑法上の犯罪を構成する『人身売買』とはみなされなかった」とあるのだが、旧刑法第226条には「帝國外ニ移送スル目的ヲ以テ」と書いてあるだけであり、国内に留まるか否かは関係が無いように思える。暇な時間があれば、もう少し調べてみたいところだ。
第三十三章 略取及ビ誘拐ノ罪
第二百二十四條
未成年者ノ略取又ハ誘拐シタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス第二百二十五條
營利、猥褻又ハ結婚ノ目的ヲ以テ人ヲ略取又ハ誘拐シタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス第二百二十六條
帝國外ニ移送スル目的ヲ以テ人ヲ略取又ハ誘拐シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス
帝國外ニ移送スル目的ヲ以テ人ヲ賣買シ又ハ被拐取者若クハ被賣者ヲ帝國外ニ移送シタル者亦同シ第二百二十七條
前三條ノ罪ヲ犯シタル者ヲ幇助スル目的ヲ以テ被拐取者又ハ被賣者ヲ収受若クハ藏匿シ又隠避セシメタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ処ス第二百二十八條
本章ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス第二百二十九條
第二百二十六條ノ罪、同條ノ罪ヲ幇助スル目的ヲ以テ犯シタル第二百二十七條第一項ノ罪及ヒ此等ノ罪ノ未遂罪ヲ除ク外本章ノ罪ハ營利ノ目的ニ出テサル場合ニ限リ告訴ヲ待テ之ヲ論ス但被拐取者又ハ被賣者犯人ト婚姻ヲ爲シタルトキハ婚姻ノ無効又ハ取消ノ裁判確定ノ後ニ非サレハ告訴ノ効ナシ